WWDC2016(Appleの開発者向け会議)が終わりました。
昨年は、フリーランスエンジニアとして、友達と一緒に気楽にSFに遊びにいきましたが、今年は会社立ち上げ直後・絶賛プロダクト開発中ということもあり、朝食を食べながら、セッションビデオをApple TVにストリームしてキャッチアップしました。
発表内容は盛り沢山でしたが、その中で気になったトピックをピックアップしてみました。
なお、ちゃんと網羅的に内容把握されたい方は坂田さんのブログをどうぞ。
CallKitの解放で、MNO離れとMVNO人気上昇がますます進む
LINE、Whatsapp, ViberなどのVoIPアプリの無料電話で、着信に気付かず取れなかったという経験をした人は多いと思います。iOSではサードパーティのアプリが表示できる通知の作法が一律で決められており、電話の着信であろうとも、ロック画面にぴゅっと表示が出て、端末が一回震えるだけでした。これではなかなか気づかれないため、結局お店に電話するときや自宅に電話したりするときなどは普通の電話を使ってました。
しかし今回のCallKitの解放により、LINE等のVoIPアプリでも標準の電話UIを利用することができるようになりました。まだ実際に試していないので確実ではありませんが、電話着信時にロック画面を全部乗っ取って、電話を鳴らし続けることができるようになるはずです。
こうなると、通常の電話とVoIPの無料電話の間では「音質」しか差が無くなります。最近のVoIPアプリの音声圧縮技術の向上と、モバイルネットワーク回線自体の品質の向上により、普通に使う分にはほとんど差を感じないぐらいになってきていると感じます。
「電話がかけ放題だから」という理由で、MVNOに手を出さず、MNO(ドコモ・KDDI・ソフトバンクら)に残っているユーザも多いと思いますが、LINEの無料通話で十分となれば、ますます「データ回線」だけを求めるユーザが増えるキッカケになりそうです。
watchOS3が劇的に進化し、Appleの本気度が見えた
Apple Watchは1,000万台を出荷したとはいえ、まだ到底「成功」と言えるレベルには達していないと思います。
一部の人の間では、Google Glassのようにひっそりと見捨てられていくのでは・・・なんてウワサもあったなかで、多くの大改善が発表されました。
一番の改善ポイントはよく使うアプリが一瞬で立ち上がるようになったこと。
現状のwatchOS2ではアプリの起動に3-4秒かかることもあり、「そんなに待つんだったら、iPhoneをポケットから取り出したほうが早いヨ!」と叫びたくなることも。
watchOS3では、アプリがコンプリケーション(文字盤の上のウィジェットみたいなもの)に設定されたり、ドック(後述)に設定されると、よく使うアプリとして認識され、アプリがメモリに格納されるため、起動が7倍速くなります。実際デモでも一瞬で起動してて、体感上100倍ぐらい速くなっているように感じました。笑
次いで、インターフェースの改善も大きいですね。ぼくはこんな記事を書いて、インターフェースについて苦言を呈していたのですが、以下の様な改善が施されました。実際に使ってみないと分かりませんが、相当使い勝手がよくなる予感がします。
画面下からのスワイプ
全く使わないグランスが消滅して、iPhoneでおなじみのコントロールセンターに。
端末横のボタン
全く使わない電話帳起動が消滅して、ドック機能が割り当てられた。ドックにはよく使うアプリを登録して、スワイプして切り替えられる。(下図)
iMessageのテコ入れで何が起きるのか
しばらく放置状態だったApple純正メッセージアプリのiMessageに大リノベーションが施されました。LINEやWeChatのようなステッカーが入れられるようになるだけでなく、ステッカーストアも開設。
多くの人はLINEでよくね?とスルーかもしれないけど、意外にインパクトあるんじゃないかと思います。
うちの母親を例に取ります。まず彼女はアプリを自分でダウンロードしてセットアップすることができません。
さらにLINEやWhatsappとかってSMSで受け取ったピンコードを入力して、普通のアプリより一段難しいセットアップが必要だし、何かとマネタイズ攻撃をしかけてくるから、その度に不安になるようで、「こういう文言がでたんだけど、キャンセルしても大丈夫?」とか毎回聞かれるんですよね。
メッセージの表現能力ではほぼLINEに追いつき、セットアップが要らず、今後のサポートも軽そうだから、親にはiMessageを使わせようかと思ってます。
こういう人結構いるんじゃないかなぁ。
ちなみにギークの皆さんには信じられないかもしれませんが、iOSデバイスではGoogle Mapsの3倍Apple Mapsが使われているとのこと。プリインアプリの力、恐るべし。
アップルの中で進むオープン化とリーンアプローチ
俺様の後について来い!スタイルのスティーブ・ジョブス政権下と比較し、ティム・クック政権下では以下の3つの方針が透けて見える気がします。
リーンアプローチ
AppleWatchをギリギリ使えるレベルで出荷。ユーザフィードバックを集め、マーケットとの対話によってプロダクトを進化させていく。
スティーブジョブス存命時であれば、Apple Watchのリリースは1年遅らせて彼が十分満足するものになってから出荷したかもしれない。
オープン化
API(WebKit, SiriKit, CallKit)、プログラミング言語(オープンソースSwift)などを続々と公開
重要ドメインは自分で抑えに行く
地図、コミュニケーション、ニュースなど、プラットフォームとなり得るドメインは自分でもやる。
独裁者政権から、民主政権にスムーズにトランジッションされた感があります。キーノートのエンタテイメント性がスティーブ存命時に比べて著しく低下してしまったのは致し方のないところでしょうか・・・
個人的に
自分がいま作っているアプリの大前提が根本から覆るような発表があったらどうしよう・・・と内心ビクビクしていたのですが、それが杞憂に終わり、とりあえず向こう1年は安心して邁進できることが確認できたことが一番の収穫でした。ホッ。
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