WWDC2016独断と偏見によるまとめ

WWDC2016(Appleの開発者向け会議)が終わりました。

昨年は、フリーランスエンジニアとして、友達と一緒に気楽にSFに遊びにいきましたが、今年は会社立ち上げ直後・絶賛プロダクト開発中ということもあり、朝食を食べながら、セッションビデオをApple TVにストリームしてキャッチアップしました。

発表内容は盛り沢山でしたが、その中で気になったトピックをピックアップしてみました。

なお、ちゃんと網羅的に内容把握されたい方は坂田さんのブログをどうぞ。

CallKitの解放で、MNO離れとMVNO人気上昇がますます進む

LINE、Whatsapp, ViberなどのVoIPアプリの無料電話で、着信に気付かず取れなかったという経験をした人は多いと思います。iOSではサードパーティのアプリが表示できる通知の作法が一律で決められており、電話の着信であろうとも、ロック画面にぴゅっと表示が出て、端末が一回震えるだけでした。これではなかなか気づかれないため、結局お店に電話するときや自宅に電話したりするときなどは普通の電話を使ってました。

しかし今回のCallKitの解放により、LINE等のVoIPアプリでも標準の電話UIを利用することができるようになりました。まだ実際に試していないので確実ではありませんが、電話着信時にロック画面を全部乗っ取って、電話を鳴らし続けることができるようになるはずです。

こうなると、通常の電話とVoIPの無料電話の間では「音質」しか差が無くなります。最近のVoIPアプリの音声圧縮技術の向上と、モバイルネットワーク回線自体の品質の向上により、普通に使う分にはほとんど差を感じないぐらいになってきていると感じます。

「電話がかけ放題だから」という理由で、MVNOに手を出さず、MNO(ドコモ・KDDI・ソフトバンクら)に残っているユーザも多いと思いますが、LINEの無料通話で十分となれば、ますます「データ回線」だけを求めるユーザが増えるキッカケになりそうです。

watchOS3が劇的に進化し、Appleの本気度が見えた

Apple Watchは1,000万台を出荷したとはいえ、まだ到底「成功」と言えるレベルには達していないと思います。

一部の人の間では、Google Glassのようにひっそりと見捨てられていくのでは・・・なんてウワサもあったなかで、多くの大改善が発表されました。

一番の改善ポイントはよく使うアプリが一瞬で立ち上がるようになったこと。

現状のwatchOS2ではアプリの起動に3-4秒かかることもあり、「そんなに待つんだったら、iPhoneをポケットから取り出したほうが早いヨ!」と叫びたくなることも。

watchOS3では、アプリがコンプリケーション(文字盤の上のウィジェットみたいなもの)に設定されたり、ドック(後述)に設定されると、よく使うアプリとして認識され、アプリがメモリに格納されるため、起動が7倍速くなります。実際デモでも一瞬で起動してて、体感上100倍ぐらい速くなっているように感じました。笑

次いで、インターフェースの改善も大きいですね。ぼくはこんな記事を書いて、インターフェースについて苦言を呈していたのですが、以下の様な改善が施されました。実際に使ってみないと分かりませんが、相当使い勝手がよくなる予感がします。

画面下からのスワイプ
全く使わないグランスが消滅して、iPhoneでおなじみのコントロールセンターに。

端末横のボタン
全く使わない電話帳起動が消滅して、ドック機能が割り当てられた。ドックにはよく使うアプリを登録して、スワイプして切り替えられる。(下図)

iMessageのテコ入れで何が起きるのか

しばらく放置状態だったApple純正メッセージアプリのiMessageに大リノベーションが施されました。LINEやWeChatのようなステッカーが入れられるようになるだけでなく、ステッカーストアも開設。

多くの人はLINEでよくね?とスルーかもしれないけど、意外にインパクトあるんじゃないかと思います。

うちの母親を例に取ります。まず彼女はアプリを自分でダウンロードしてセットアップすることができません。

さらにLINEやWhatsappとかってSMSで受け取ったピンコードを入力して、普通のアプリより一段難しいセットアップが必要だし、何かとマネタイズ攻撃をしかけてくるから、その度に不安になるようで、「こういう文言がでたんだけど、キャンセルしても大丈夫?」とか毎回聞かれるんですよね。

メッセージの表現能力ではほぼLINEに追いつき、セットアップが要らず、今後のサポートも軽そうだから、親にはiMessageを使わせようかと思ってます。

こういう人結構いるんじゃないかなぁ。

ちなみにギークの皆さんには信じられないかもしれませんが、iOSデバイスではGoogle Mapsの3倍Apple Mapsが使われているとのこと。プリインアプリの力、恐るべし。

アップルの中で進むオープン化とリーンアプローチ

俺様の後について来い!スタイルのスティーブ・ジョブス政権下と比較し、ティム・クック政権下では以下の3つの方針が透けて見える気がします。

リーンアプローチ
AppleWatchをギリギリ使えるレベルで出荷。ユーザフィードバックを集め、マーケットとの対話によってプロダクトを進化させていく。
スティーブジョブス存命時であれば、Apple Watchのリリースは1年遅らせて彼が十分満足するものになってから出荷したかもしれない。

オープン化
API(WebKit, SiriKit, CallKit)、プログラミング言語(オープンソースSwift)などを続々と公開

重要ドメインは自分で抑えに行く
地図、コミュニケーション、ニュースなど、プラットフォームとなり得るドメインは自分でもやる。

独裁者政権から、民主政権にスムーズにトランジッションされた感があります。キーノートのエンタテイメント性がスティーブ存命時に比べて著しく低下してしまったのは致し方のないところでしょうか・・・

個人的に

自分がいま作っているアプリの大前提が根本から覆るような発表があったらどうしよう・・・と内心ビクビクしていたのですが、それが杞憂に終わり、とりあえず向こう1年は安心して邁進できることが確認できたことが一番の収穫でした。ホッ。

 

会社設立マニュアル 完全版

2016年3月末にアスツール株式会社を設立しました。絶賛プロダクト開発中!(サービス内容等については乞うご期待)

会社を作るにあたり、様々な手続きが必要になるんですが、意外にまとまった情報が無いんですよね。Google先生に聞いたり、先輩方から教えてもらい、なんとか無事設立できました。今後起業を決意した人が、サクッと会社を作れるように、「会社設立時の完全作業マニュアル」をまとめてみたいと思います。

そもそも法人をつくるべきなのか?

個人事業でやるのか、法人化するのか。法人化するなら株式会社か合同会社か。

このあたり、初めて会社を立ち上げる人は知っておくべき!会社設立で失敗しないための全手順 を読むとよいと思います。

個人的には、事業を大きくしていくつもりがあるなら、迷わず法人化するべきだと思います。

いざ、設立

第一関門は定款(業務内容・資本金・代表者・住所等、会社の内容を定義する書類)づくりです。Freee会社設立を使いましょう。このサービス無しに、自分でこんな書類を作った人もいるのか・・・と思うとゾっとするぐらいです。神サービス。

スタバで使ってみた税理士が贈る、会社設立freee+αのアドバイスも合わせて参考にさせて頂きました。

定款の内容を考えよう

Freee会社設立が決めるべき事を聞いてくれます。

会社名:お好きなものを。ぼくは会社のビジョン、ドメイン名の空き、なるべくア・Aではじまる名前がいいなと思って選びました。愛着と誇りを持てる名前にしましょう!

住所:僕は実務はコワーキングスペースでやっていますが、今後移転の可能性大なので登記は実家の住所にしました。法務局や年金事務所に行く時は、実家がある練馬区に行かなければならないのが唯一のデメリットですが、年に2-3回ぐらいしか無いのでそれほど負担にはならないと思います。

資本金:いくらでも大丈夫ですが、最低でも100万円はあったほうがいいでしょう。

発行株式数:慣行だと1株1万円だよ、みたいな記事も見かけましたが、ある投資家の方から、もしスタートアップをやるなら株はなるべく沢山発行しておいたほうがいいよとアドバイスをもらいました。外部調達を重ねて株主が増えてくると、株式を分割しなければならなくなるので。というわけで、3円 x 100万株で300万円の資本金とすることにしました。

会社印を買おう

これから沢山の書類にハンコを押すことになります。速攻でオーダーしちゃいましょう。

会社設立Freee上でもオススメの会社印が売られてて、それでもOKなのですが、僕はどうせ作るなら材質とか書体とかもう少し広い選択肢から選びたかったので、別途オーダーしました。

この記事を読んで、会社印ってどんなものかのイメージを掴みました。

実印(代表印)・銀行印・角印の3つを作るのが一般的のようですね。ぼくはInkans.comというサイトで、をオーダーしました(材質は黒水牛、書体は篆書体)

印鑑の有効性ってどうなのよ?と思ったりもしますが、行政の仕組み・商習慣に深く入り込んでいるので、ここは従うしか無いです。(だれかがディスラプトしてください)

会社印で犯した恥ずかしい間違い

届いた印鑑を使って、早速登記書類を練馬法務局に提出しました。登記はもちろん会社の実印を使うわけですが、そのときに皆さんなら下の印鑑のうち、どれを使いますか?

Screen Shot 2016-06-11 at 11.22.15

ぼくはてっきり一番右の一番大きな印鑑が実印だと勘違いしてしまい、これを押して登記書類を提出してしまいました。でも、実は正解は一番左のやつでした。

通例は下記のように使い分けるみたい。

実印(左):真ん中に代表取締役と書いてある丸い印鑑。契約書や登記書類に使う。言うまでもなく一番大事。

銀行印(中央):真ん中に銀行印と書いてある丸い印鑑。銀行への提出書類に使う。実印と分けることで安全性を保つ。

角印(右):でっかく社名がのってる四角い印鑑。請求書などに使う。

法務局の人は、別に役所としてはどんな印鑑でもいいので、このままでもいいですよ、と言ってました。でも、まだ契約書も何も結んでいない状態だったので、ちゃんと直したいなと思い、もう一度法務局に行って、登録印の変更をしてきました。

というわけで、印鑑を押すときにはしっかり陰影とカタチを確認してから押しましょう!

顧問税理士さんを探す

自分で全ての会計業務をやることも可能だとは思いますが結構たいへんです。日々、これは費用化できるのかな?この場合の仕訳はどうするんだろう?みたいな疑問が湧いてきますし、決算手続き時には業務が止まってしまう。法人税の計算は超難しい。それらを考えると、顧問税理士さんはつけたほうが絶対いいと思います。

私は3名の税理士の方とお会いした上で、鈴木会計事務所さんのスタートアップ期応援プラン(毎月の顧問料は無料、決算時8万円)でお願いすることにしました。

仕訳はMoneyFowardのMFクラウドを使って自分でやりつつ、分からないところを税理士さんFacebook messenger等で教えてもらっています。スピーディかつ的確にアドバイスを頂けるのでとても助かってます。

領収書を送って記帳(仕訳)まで全部やってもらうサービスを提供している税理士さんもいますが、立ち上げ直後だとそれほど費用の件数も多くないですから仕訳は自分でやってコストセーブすることにしました。実際、記帳・仕訳は1ヶ月合計で2-3時間程度ぐらいしか時間がかかってないですね。

会計ソフトを選ぶ

Freee or MFクラウド(by MoneyFoward)の二択でしょう。どちらも評判よいので、正直どっちでもOKかと。

このへんの比較記事が参考になるでしょう。あえて言うなら、Freeeのメインターゲットはフリーランスなどで簿記の知識があまりない人、MFクラウドは簿記の知識が多少ある人や法人、という感じでしょうか。

ぼくは、MoneyFowardの創業者の辻さんがソニー時代の先輩なので、MFクラウドにしました!

オフィスを選ぶ

固定費をなるべく抑えるため、最初はコワーキングオフィスでサービス開発をすることにしました。僕の家からは五反田が出やすいので、五反田のPAOというコワーキングを契約しました。

その後、リクルートさんが運営しているTech Lab Paakというイノベーション支援施設の審査をパスし、こちらも使わせて頂いています。ロケーションはApple Store渋谷と同じビル、熱気あふれるコミュニティ、無料のドリンクとお菓子、と至れり、尽くせりです。

昨今の起業熱の高まりで、自治体も活発に創業支援施設を立ち上げていますので、こういった施設を活用するのもよいと思います。

社会保険への加入

法人化すると社会保険(健康保険や厚生年金)への加入が義務になります。負担コストが増えるので、創業間もない会社はこれを無視している会社もあるようですが、これからちゃんと取り締まっていくよ、という方向にあるとのこと。

今後スタッフを雇用していくつもりであれば、安心して働ける職場を作るという意味で加入したほうがよいでしょう。

手続きは、役員報酬額だけ決めて、年金事務所に行きましょう。書類の記入等は、スタッフの方々が懇切丁寧に教えてくれます。

自分(創業者)の役員報酬をどうするか

自分で資本金を入れて、それを報酬で引き出してもしょうがないですよね。報酬の分だけ所得税徴収されてしまいますし。ただ報酬無しにしてしまうと、健康保険や厚生年金のベネフィットが受けられなくなってしまうので、最低レベルということで8万円/月の役員報酬を設定しました。外部からの資金調達が成功したら、もう少しサステイナブルな料金にしようとは思ってますが。

いずれにしろ創業者はなるべく資本燃焼を抑えて、会社全体の評価額(株価)を上げることのほうに注力すべきかと思います。

法人口座の開設

個人のお金と法人のお金を明確に分けるため、法人口座の口座は必須です。個人の口座開設は超簡単ですが、法人口座の開設は意外と大変です。

大きく分けて都市銀行かネット銀行かの選択肢があります。都市銀行はなんとインターネットバンキングを使う場合、毎月2160円もかかります。(普通の口座なら無料)

楽天銀行や住信SBIネット銀行などのネット銀行は、ネットバンキングを使っても維持費はかかりません。

このへんの詳しい情報は、銀行間比較の記事が参考になりました。

基本的にはネット銀行でよいでしょう。

BtoBのビジネスをやろうと思ってて都市銀行だと信用度が増す、毎月何度も都市銀行宛の振込みをする必要があるとか、そういった事情があるなら都市銀行での口座開設を検討すればよいでしょう。

私は楽天OBということで、楽天銀行で開設しました!

審査意外に厳しかったです。事業計画のような書類をFAXで送ったりしました。

法人口座開設にあわせて、この口座に紐づくJCBデビットカードを作ったのですが、JCBのクレカに対応しているサービサーであればクレカと全く同じように使えるので、重宝しています。デビットはコスト発生と支払がずれないので仕訳も楽です。

固定電話番号の取得

携帯電話がこれだけ普及したにもかかわらず、未だに固定電話の番号必須、ということが時々あります。とはいえ、03番号で固定電話を引いても、オフィスや自宅にいつもいるわけではないし、コストは高い。

僕のオススメは、SMARTalk050Plusを使って050の番号をスマホで取得する、です。発話時には、SIMにアサインされている090/080/070の番号ではなく、050の番号が表示され、この050番号で着信することもできます。(ただし、iPhoneは着信時の振る舞いは通常の電話の着信通知ではなく、3rd partyアプリの通知になる)

この2つのサービスの比較記事はこちら

外部投資家からの資金調達

これは奥が深すぎて、1ブログエントリーではカバーしきれないですね。

スタートアップの資金調達バイブル本を読みましょう。

この本は、株式による資金調達について書かれていますが、デット(借り入れ)という選択肢もあります。政策金融公庫の創業融資は個人保証なし・無担保で有融資をしてくれる可能性があります。利子は2%強と、マイナス金利時代にしては高いですが、信用も実績もない会社がこれくらいのコストで資金を調達できるのならばよい条件でしょう。持ち株比率を落とすこと無くある程度の仮説検証を進めたいという際には、非常に有効なオプションになり得ると思います。

さぁ本業にフォーカスしましょう

以上、創業日から僕がEvernoteに貯めてきた手続きのTips大放出でした。

エンジニアリングでは「車輪の再発明を避けよう」という文化がありますが、ビジネス面でも、みんなが同じようにやっている作業とかはオープンなKnowledgeにして、よりユニークな価値を作るための「本業」に集中できる時間を増やしていきたいものですね!

追伸

アスツール株式会社ではiOSエンジニア・サーバーエンジニアを募集しています!(特に自然言語処理ができるサーバーエンジニアさん)

ゼロからのサービス立ち上げ・会社立ち上げにエンジニアとして関わってみたい、という方はぜひお声がけくださいませ。フルコミット大歓迎ですが、本業の傍ら夜だけなど、フレキシブルに対応可能です。

 

プロダクトづくりの観点から見た理系・文系の区別の弊害

理系・文系のくくり方をもう止めた方がいいんじゃないの?と思います。特に高校で決めたら、基本的にそれが一生ロックされるというならわし。

僕はハード・ソフト含めて10年あまりプロダクト作りに携わってきたので、その経験をもとに、どうしてそう思うのかを書いてみます。他の業界のことはよくわからないので、ぜひこのエントリーを読んでご意見くださいませ。

この区別の起源

Wikipediaの「文系と理系」の項を読むと、文系・理系という区別は、旧制高校の制度に起源があるようです。
 

そもそもこんな区別があるのは、発展途上国の特徴である。黒板とノートがあればすむ文系にくらべ、理系は実験設備に金がかかるので、明治時代の日本は、学生数をしぼらざるをえなかった。そこで数学の試験をし、文系/理系をふり分けることにした。入試問題が別々なので、その前の段階で文系/理系を選択しなければならない。

— 橋爪大三郎、『橋爪大三郎の社会学講義2』(夏目書房、1997)63頁

 
なるほど、結構納得感のある説明。でも、旧制高校って今から100年以上も前の話。いったいこの制度いつまで続けるの?という点はしっかり考える必要はありそうです。

ものの作り方が変わってきている

ものづくりは、
  • 自分の得意なこと(技術)
  • 世の中に求めてられていること(ニーズ)
  • 自分のやりたいこと(意思)

の重なる部分でやるわけですが、最近この3要素間の比率が急激に変わってきているように感じます。

 
これまでのものづくりでは、自分の得意なことを最重要視して、それをいかに売るかというアプローチが多かったと思います。うちは液晶が強いからテレビ作ろう!とか。こういう風に、何を作るのかがビシッと決まっている時は完全に分業するのが正解で、技術者(理系の人)が技術を突き詰めた商品を作り、それを営業(文系の人)が売ってくるモデルが成立していたのでしょう。
 
しかし昨今、ものを作るための手段は、だんだんとコモディティ化が進んでいます。ハードウェアでは、チップセット、メモリ、基板、液晶、バッテリ、外装を組み合わせればそれなりの商品を作ることができます。ソフトウェアでは、開発フレームワーク、API、OSSライブラリなどを組み合わせることである程度のプロダクションサービスを作ることができます。
 
そんな中で今最も大切なことは、ユーザー体験を起点に考え、世の中に求められているものをいかに作るかなのですが、この「世の中に求められるもの」を掘り当てるのが非常に難しいわけです。文系の人が、「これがニーズあるものです」という企画を作って、理系の人が「はいわかりました。それ作れば売れるんですね。頑張ります」というモデルは成り立ちませんw
 
エンジニア、デザイナー、企画者、経営者、という役割の境界線さえも一旦忘れ、ユーザーの価値を作るというゴールからの逆算でアプローチする必要があります。境界線の中にこもったきりでは既存の思考の枠を出ることはできず、境界を超えて思考することで、はじめて破壊的なアイディアの可能性が生まれてきます。
 
一人ですべてをやろう、というのではありません。得意分野(major / expertise)はもちつつ、より幅広い分野の知見を貪欲に吸収していかなければ、得意分野の強みが活きない時代になってきているのです。

思考停止の遠因

もちろん、自らその境界を突破して知見を獲得しようとする人たちもいます。でも、多くの人は、自分のコア領域の周辺には進出するものの、理系・文系の境界線に差し掛かると、無意識にそこで歩みが止まる人が多いのではないでしょうか。
 
たとえば、マーケティングを専門にしていた人が、営業や商品企画に進出することはあっても、「今後のマーケティングではプロダクトの中身もある程度理解していないといけないな」とエンジニアリング領域の勉強をするところまで行く人はあまり多くないと思います。そのリターンは非常に大きくなっているにも関わらず。
 
このように無意識に境界線の前で立ち止まってしまうことこそが、理系・文系区別の一番のデメリットだと思います。
 
多くの場合において、高校2年ぐらいで理系か文系を決めると思いますが、そのときなんとなく決断を下した結果、「あ、ぼくは文系なんだ」「あ、きみは理系なんだね」というレッテルが貼られ、自分でも意識しないうちに上記のような非合理的な決断を一生続けることになるのです。
 
実際のところ、ぼくがプログラミングを勉強してる話なんて言うと、まわりの反応は「あれ、文系だよね?」が決まって第一声の反応です。
 
僕のプログラミングスキルは大したことが無いのですが、これまで培ってきた商品企画・プロダクトマネジメント・プロダクトマーケティングのスキルとプログラミングスキルをかけ合わせることで差別化を図ることが可能で、サラリーマンとしても組織の中で差別化を図ることができましたし、個人としてリリースしたTennisCoreもApple Watch Best of 2015アプリに選んでもらうなど一定の成果をおさめることができました。境界線を超えた「掛け合わせ」のメリットは非常に大きいなと実感しています。
 

組織づくりまで理系・文系ベース

理系・文系の区別は、そのはじまりは実利的な理由によるものだったかもしれませんが、今では、ほぼ宗教かと思うほど盲目的な信仰です。その証拠に、理系・文系の境界の延長線は高校、大学のみならず、実社会においても続きます。文系の人は企画部へ、理系のひとは開発部へ。
 
何を作るかが明らかな時代においては、この機能切りの仕組みがワークしていたかもしれません。しかし、ユーザー視点から逆算してモノを作るべき現代、新たな価値を生み出さなければならないフィールドではことさらに、プロダクトごとの組織をつくるほうが成功確率は圧倒的に高いと思います。

教育を逆算方式に

では、どうすればよいのか?
 
まずは個々人が、無意識に持っている理系・文系を壁を意識的に取り払う必要があるのは言うまでもありません。とはいえ、個人の努力に頼るだけではなく、仕組みの改善も必要です。
 
ぼくは、学校教育も実社会のように達成したいことからの逆算方式にするべきではないかと思います。
これまでの教育は、いろいろな経験をした大人たちが、将来こういうツールが必要になるからいまから勉強しておくといいよ、というのを考えて子どもたちに「与える」というスタイルの教育でした。その結果、ぼくたちは、数学や物理や古典など理由もわからず学んできました。なんとか自分で意味を見いだせた科目はよいのですが、そうでない科目は苦行以外の何物でもありませんでした。
 
今後は、この「これなんの役に立つの問題」を撲滅し、
 
世の中ではどんな問題があるという点を気づかせる。
その解決方法にはどんな方法があるのかを発見させるためのサポートをする
そのためにはどんな知識・能力が必要なのかを考えさせる
目的と意味付けを理解して学習する
 
というアプローチを取っていくべきではないでしょうか。この際、今学校で教えられている国語、数学、外国語などと同じような知識が使われるはずですが、生徒の学習意欲、習熟スピードの観点で言うと現在の数倍の学習効果が上がるのではないかと思います。
 
また、この時に取り組んだ「問題」が10年後、20年後に存在しない問題になってしまったとしても、問題から逆算して必要なことを自ら学んでいくというユニバーサルなスキルは廃れることはありません。
 
そんな教育においては、理系・文系という区別は意味不明なシロモノでしか無いと思うのです。
 
 

Appleがかけ忘れた魔法

Apple Watch発売と同時に購入し、自分のアプリもリリースし、1ユーザー / 開発者として3ヶ月間使ってきたレビューをまとめてみました。

Apple Watchの素晴らしいところ

メインフレーム→ワークステーション→パソコン→スマートフォン、とコンピューティングデバイスがどんどん小さくなり、いつでもどこでも、簡単に使えるようになるという流れの先にウェアラブルデバイスがあることは間違いないトレンドです。スマホを使えない・使いたくないシチュエーション確実に存在するし、「スマホ疲れ」は人間にとって解決すべき問題だと思います。

その問題を解決するためのひとつの解として、Apple Watchはその能力の一端を見せてくれています。

いままでスマホで、メッセージの通知→メッセージの確認→他のアプリの未読も気になりニュースやFacebookも見てしまう→気付いたら15分、みたいなことが無くなり、一気にメッセージの確認だけして、行動を打ち切って本来やるべきこと・やりたいことに時間を多く配分できるようになりました。通知機能はホントに便利です。

ランニング中の地図確認とか、テニスプレー中のスコア確認とか、いままでできなかったこともできるようになりました。

でも、これを母親や妹を含めた一般の人々に見せても、「ふーん」っていう反応なんですよね。ちょうどiPhoneが出る前に使ってたスマホ(W-Zero3とか)を見せた時みたいな反応。

何が足りないんだろう、ってずっと考えてたんですが、それはインタラクションという名の「魔法」じゃないかと思います。

Appleの魔法

Macではマウス操作、iPodではクリックホイール、iPhoneではマルチタッチ。Appleの歴代のヒットプロダクトには、必ず『インタラクションの革新』という名の魔法がかかっていました。(※インタラクション:機械やシステムとユーザーの間の関わり。)

いみじくもスティーブ・ジョブス自身がiPhoneの商品発表において、「数年に一度、全てを変えてしまう新製品が生まれる。Appleは幸いにも複数のそれらの機会に恵まれた。Macintoshでパソコンの世界を変え、iPodで音楽の世界を変えた。今日iPhoneで世界を変える。」と言って、その鍵となる要素として最初に上げたのは、静電タッチセンサーを活用したマルチタッチインターフェースでした。

もちろん、洗練されたOS、発達したソフトウェアやコンテンツのエコシステム、プロダクトデザインなど、インタラクション以外にも大切な要素は沢山ありますが、実はこれらの能力が高度化すると、どんどん機械を扱うのが難しくなるもの。高度で複雑な操作を、心地よく操作したいという一見すると相反する問題を一気に解決するのが、革新的なインタラクションなのです。

インタラクションがなぜそんな大事なのか?

コマンドラインを操るオタクしか扱えなかったコンピューターが、マウスの登場によって全ての人のものになりました。

スタイラスを操るオタクしか扱えなかったスマートフォンが、マルチタッチの登場によって、全ての人のものになりました。

インタラクションこそがGeekオタクとThe rest of the people(その他すべての人々をつなぐ架け橋であり、アップルが歴代のヒットプロダクトにかけてきた魔法の源泉でした。そして、スティーブ・ジョブスはその魔法のレシピへの嗅覚を人一倍強く持っていた人物だと思います。

Apple Watchに足りないインタラクションの革命

Apple Watchは基本的にタッチでほとんどの操作を行います。デバイスの横にはデジタルクラウンと呼ばれる竜頭がついていて、これを回すことで拡大縮小やスクロール動作をしたり、竜頭を長押しするとSiri (音声認識)が起動します。

つまり、Apple Watchには革新的なインタラクション存在せず、基本的にiPhoneのインタラクションパラダイムを踏襲してます。もちろんそれで問題なく操作ができるのであれば、よいのですが、実際の所ストレスを感じる場面が生じています。

まず、小さい画面への集中が必要である場面が多いことです。

Apple Watchを含めたウェアラブル商品の目的って、機械を使う煩わしさを軽減してより人間的な暮らしをすることだと思っているのですが、いまのインタラクションでは、それが完全に解決されていません。ホーム画面で、アプリを選ぶ↓この画面が象徴的です。

AppleWatchHome

一方、Siriは結構便利で、たとえばベッドに横になっているときに「1時間後に起こして」と呟いて、そのまま昼寝したりできたりします。こんなとき、「あーまさにこういうこと。こんな風に、ほかの動作もラクに操作したいよね」と感じたり。

Siriも万全ではなくて、難点は起動のためにデジタルクラウンの長押しが必要で両手がふさがってしまうんです。自転車に乗っているときにナビを起動したくても、両手を話さないと操作できなかったりします。

ウェアラブルデバイスの究極的なゴールは、空気ののようにそこに常に当たり前にあり、人間の自然な行動(座る、歩く、食べる、寝る)といった本来の行動を止めることなく・変えることなく自然に使うことができることだと思います。もっと言うと「機械を操る」という感覚から「自分の意思に追従する」という感覚への転換、とも言えるのではないでしょうか。

iPhone/iPad時代の画面を見るために下を見る、手で触って(両手を塞)オブジェクトを選択するといった動作から発想を転換し、上を向いて画面を凝視しなくてもストレスなく操作できる新しいインタラクションを野心的に模索していく必要があると感じました。

問題ばっかり挙げてても建設的でないので、ちょっとアイディアを考えてみました。

1. ジェスチャーの有効活用

たとえば、

1回シェイクしたらSiriが起動。2回シェイクしたら地図が起動。3回以降はユーザー設定が可能。そして、腕をくるっと上に回すと「OK」、下に回すと「キャンセル」がユニバーサルな操作として存在する。みたいなイメージ。

2. もっと機能を割り切ってシンプルなUIにする。

スマホにいろんなアプリを使ってる人でも、実はそのなかで本当に使っているアプリって1画面目にのってるアプリだけだったりしますよね。Watchで本当にやりたいことって、iPhoneの中でも特に気に入ったアプリを常に肌身離さず使いたい、みたいなニーズのはず。

と書いてきましたが、ほんとのところはそんな凡人のアイディアを圧倒的に凌駕するような、それこそ魔法のようなインタラクションを編み出して、もう一度ぼくたちをアッと言わせてほしい、というが本心ですかね。

まとめ

Apple Watchの目指す未来に共感し、毎日愛用しているからこそ、ちょっと真面目に問題提議してみました。

Appleには優秀なエンジニアやデザイナーが沢山いて、彼らが死ぬほど頑張って”Great products”を作っているのは高く評価しています。でも、そういうボトムアップ的なアプローチだけではだめで、彼らの努力を一気に昇華させるような魔法が合わさって初めて、新しい体験をThe rest of the people(全ての人々)に届けることができると思うのです。

ま、たぶん魔法をかけ忘れただけだと思うので、来年の登場が予想される第二世代のApple Watchに向けてさらなる発展を期待しましょう!

船出

3月末をもって、2年半お世話になった楽天を退職しました。

ここしばらく考えてきたことを、自分のためにここに書き記しておきたいと思います。

振り返ると人生の転機は3つあり、今につながっている気がします。

「ハマる」ことで新しい世界が開けた

 

高校時代。幸運にも大学の附属高校に入ったことで、ほとんど勉強しないでも大学に行ける環境を手に入れました。このころちょうどWindows95が出て、BekkoameやBiglobeなどのインターネットサービスプロバイダーが生まれて、という時期だったこともあり、僕もその熱狂の虜になりました。

もう本当に学校の勉強をした記憶は試験前の数日しかなくて、それ以外の時間は目的も無しにとにかくコンピューター、インターネットと戯れていました。自宅の小さな部屋のコンピューターが世界中のデータベースにつながっている、世界中の人とつながっている、という痺れるような感覚がありました。(この興奮は今でもずっと続いてます。)

最初はNiftyServeのフォーラムを見たり、Webページをいろいろ見たりしていましたが、だんだんそれだけでは詰まらなくなって、当時好きだったNBAのReggie Millerという選手のファンページをWebでつくったり、アキバ通いをしてコンピューターを自作したり、PCにLinux (Slackware)を入れてサーバーを立てたりするようになりました。

そんなある日、学校の国語の授業で、自分の好きなことを何でも書いてエッセーに纏めなさいみたいな課題が出て、僕はLinuxの開発コミュニティーについて書くことにしたんです。Linus Torvals氏が個人でつくったOSに、インターネットを通じて、世界中のあらゆる場所から様々な人々が無償で開発貢献をして、Linuxという素晴らしいOSが作られている。その結果、SunやHPといったcorporationのプロダクトと比肩しうるようなところまできている。インターネットによって、人々の働き方、仕事の仕方、さらには暮らし方まで大きく変容していくのではないか、という内容だったと思います。

僕はとくに開発者コミュニティーに何か貢献をしていたわけではなく、ユーザーの立場でプラットフォームの進化というものを目撃し、それを作文にしただけなのですが、その後驚くべき事件が起きました。

その作文を気に入ってくれた国語の先生が、産経新聞と日野自動車の協賛するエッセーコンテストに応募してくれて、めでたく入賞することができたのです。副賞として、アメリカ西海岸を入賞者10名とともに、SFからLAまで縦断する旅が贈られたのですが、この旅は僕にとって大きな転機になりました。

日本に閉じこもっていた18年の後、はじめて外の世界に触れた新鮮さ。アメリカのクラスルームのカジュアルで活発な雰囲気。英語が話せず、十分に直接対話ができないもどかしさ。

様々な刺激を受けて、大学進学後はアメリカに交換留学で行きたいと考えるようになり、英語のガリ勉を始めました。自分の本能に従い、好きなことをとことん極めると、何か新しい道が自ずと開けてくるという原体験でした。

 

ソニーでの挫折

 

新卒ではソニーに入り管理部門に配属されたのですが、入社後4年で社内募集に応募し、ソニー・エリクソン(現ソニーモバイル)に転籍し、念願の携帯電話の商品企画に携わることになりました。

ハードウェア・ソフトウェア含めたユーザー・エクスペリエンスの企画や、商品をコンセプトからマーケット・インまで導くドライブ役を任せてもらい、本当に素晴らしい経験をしました。

一方、大きな挫折もしました。

本社があったスウェーデンに赴任して2年目、従来の携帯電話とは異なる、全く新しいコンセプトのプロダクトを任されました。この時幸運だったのは、単なる紙の企画書止まりではなく、デザイナー、開発者も巻き込み、プロトタイプのチームを作ることができたことです。僕はこのプロジェクトで目指していたビジョンに心から納得し、この後1年間、全てをこれに注ぎ、プロダクトを研ぎ澄ますことにフォーカスしました。プロトタイプも完成し、ビッグネームの会社との協業の話も進んでいました。

世の中に全く存在しない価値の仮説をつくり、そのビジョンに共感する少人数のチームによって、驚くべきスピードでプロダクトを作っていく、という擬似スタートアップのような体験だっと思います。

しかし残念ながら、その後会社の業績が芳しくなくなり、Marketabilityがクリアに見えないこのプロジェクトはある日終了となってしまいました。僕のキャリアで最も楽しく、辛く、学びの多かったプロジェクトでした。(今にして思うと、プロダクトに時間を費やしすぎで、もっと資本家であるトップマネジメントへの説明・啓蒙に時間を割くべきでした。)

このことをキッカケに、会社のリソースに頼るのではなく、いつか自分の力で、大きな仮説を世の中に問うことができるようになりたい、と思うようになりました。

この後、楽天に転職し、様々なプロダクトを任せて頂き、少しずつ実績を積んでいけたことで、自分でもできるのではないかという自信が芽生えてきました。

 

迷いを断ち切る

 

事業を興して自分の可能性を試してみたいという思いが強くなる一方で、正直迷いがありました。

一番大きな迷いは「失敗への不安」です。

イケてるチームとイケてるプランがあれば、ある程度成功確率はあげられるものの、絶対成功する起業っていうのは存在しないです。なので、安全圏に住み続ける「確率」を考えたら、賢くない選択になっちゃう。

そんな中、30歳をすぎたあたりから立て続けに祖母、祖父が亡くなりました。自分もいつかは死ぬんだ、という当たり前の事実を始めて実感し、少しずつ意識が変容していきました。

成功って何だ? と。

人より長生きすること?人よりお金をかせぐこと?ベストセラー小説を書くこと?

今まで成功というのは結果のことばかりだと思っていました。でも結果を突き詰めると、人生の結果は常に「死」。事業に成功しようと、ベストセラー作家になろうと、慈善事業に一生を捧げようと、結局リセットされてみんな土にかえるんですよね。身も蓋もないですが。

だとすると、どう自分の人生を生きたかというプロセスにこそ意味があり、過去でもなく未来でもなく今という瞬間を大切に考えるようになりました。

なんとなく違和感を感じながらも成功確率を追う人生よりも、結果はどうなるかは分からないけど、今、目の前のこの瞬間に100%の納得感を積み上げた人生こそ成功じゃないかなと。

一方リスクについても考えました。

真っ先に考えた一番大きなリスクは、事業が全て失敗し、露頭に迷い、衣食住に困るという事態。

そもそもしっかりした事業を興して最後まで全力を投じれば、たとえ失敗しても、セカンド・チャンス、サードチャンスのための資金を得るチャンスはあるかもしれないし、これまでの仕事で培ってきた信頼で何がしかの職を得ることもできるかもしれない、さらに日本で仕事が見つからなければ海外に飛んでもいい。最後は実家に帰ってもいいや。まぁ死にはせんわ、と。

深く考えていくと、本当に怖いのは、今まで貯めてきたものを「失う」ということなのだなと思いました。大した学歴もキャリアも無い僕ですが、時間の経過とともに、周りの評判とか、年収とかは積み上がっていき、失うものが増えていくのも感じていました。これはやばいなと。早く裸にならなければ、この「現実」から抜けだして、自分の思いに正直になる機会を失ってしまう、という焦りです。

時間が経過すればするほど、自分の感じるリスクは増えていく。リスクを最小限に抑えるためにも、早く動かなければならないと感じました。

 

これから

 

というわけで、3月末をもって会社を辞め、完全裸一貫のスタートとなりました!

思えば高校時代より、テクノロジーの世界に触れ、驚くべきスピードとスケールで人々の暮らしぶりを変わっていくのを間近で見てきました。

僕がインターネットの世界が好きなのは、同業、競合関係なく、みんなでこの世界をよくしていこうという、ある種idealisticな雰囲気によって、エコステムが出来上がっているところです。ウェブ系の会社の人同士の繋がりが強いのも、株式会社日本のインターネット、みたいなところがあるからだと思いましたし、シリコンバレーもそんな感じだと思います。

これまではそのコミュニティーが作りだす波に乗って、様々な心躍る体験をさせてもらいましたが、これからは、世界をさらに進化させていくようなコンスーマーサービスを作ることで、恩返しをしていきたいです。

よく会社はいつ登記するの?とか資金調達は?と聞かれるのですが、まずはユーザーに喜んでもらえるプロダクトづくりとチームづくりにフォーカスします。

今後半年程度をかけて、ひたすらプロダクトを作りつつ試行錯誤・悪戦苦闘していきたいと思います。サポートの程ぜひよろしくお願い致しますmm

Apple Watchを買うべき5つの理由

apple-watch-selling-points

昨年9月に発表されたときは、ふーんという感じだったのですが、発売が近くなってちょくちょく関連記事を読む機会が増えたせいか、だんだんと気になってきました。というわけで、もしAppleWatchを買ったらどんな風に使うかなぁと考えてみました。

商品概要については、AppleのビデオNaverまとめをご参照ください。

1. 動いているときの情報チェックができる

自転車で待ち合わせ場所に向かっているときに、待ち合わせ相手からのメッセージが来てるかも?と思って頻繁に携帯を取り出したり、歩きながら地図を見ている時ずっと携帯を持っているのが疲れる、という場面が結構あります。AppleWatchであればWatchフェースをひょいっと顔に向けるだけでアンロックされて、即情報チェックができますので、こういうケースでは活躍しそうです。

あと、僕はランニングはしませんが、ランナーの方には必須アイテムになる予感。フィットネス・アクティブユースケースはWatchの一番の強みでしょうね。

2. スマホを見る時間を減らせる

ちょっと天気予報が気になってスマホを開いた結果、SmartNewsもついでに見ちゃって泥沼の携帯閲覧1時間、みたいなことがよくあります。僕だけじゃないですよね?笑

さっと軽い情報チェックはAppleWatchで済ませて、がっつり情報閲覧はスマホで、みたいな役割分担ができれば、無駄にスマホをみて過ごす時間も減らせるかもしれません。

3. 他人を不愉快にさせずに情報チェックができる

人と話しているときに、ひと目だけメッセージをチェックしたい、次の電車の時刻だけチェックしたい、と思っても相手に失礼な気がして遠慮することがあります。こんな時、Watchならスマホよりも少しだけ精神的ハードルを下げて扱うことができます。

4.フェースが自由に変えられる時計

携帯を持ち歩き始めてから時計を持っていないので、腕時計のポジションがら空きなんですよね。オシャレで、かつ遊べるアイテムがあれば、喜んで装着します。

5. さらにコミュニケーションがライトになる

スマホでのインスタントメッセージが主流になるにつれ、より直接的に短いメッセージが増えてきています。Watchでのキラーコミュニケーションアプリが登場すると、さらにライトな新しいタイプのコミュニケーションが生まれる期待をしています。ライトなものが必ずしも良いとは限らず、ケースバイケースだと思いますが、選択肢が広がるのは歓迎です。

Apple自身もこれを超意識していて、“Smart Replies & Dictation”はまさにコレですね。でもこの領域はもっとすごいアプリが3rd partyからどんどん登場してめちゃくちゃ面白くなる分野でしょう。

続いて懸念点をあげると・・・

スマホと2つ充電するのが面倒かも

ただ、パソコンを接続するときは、電源と拡張ディスプレイ用のアダプタを2つ接続するのは苦にしていないので、ちゃんとベネフィットがあれば、枕元に2つ充電器を置いておいてスマホをウォッチを充電、という習慣付けは可能かなと。

単体では動かない

かならずiPhoneとペアリングが必要で、インターネットとの通信はiPhoneが必要になるので、Watch単体では通信を使った情報更新等ができません。個人的にはWatchだけ持ってiPhoneを持ち出さないというユースケースはランニングぐらいしか思いつかないので、影響無し。

日本では発売が遅れるかも!?

Tim CookさんがApple Watch発売は4月と発言した一方で、日本での発売は秋以降ウワサ(http://www.appps.jp/149041/)も出ており、これが一番心配です。
ただ、これまで私が見聞きした情報を総合すると、日本の発売が遅れる可能性は低い、と僕は見ています。

まとめ

AppleWatchがしっかりとその役目を果たすことができれば、デバイスごとでこんなユースケースの切り分けが進むかもしれません。

Watch:Look up Experience (上を見て、何かをしながら、 情報を素早くチェック ・入力)
スマホ:Look down Experience (下を見て、リラックスして静止した状態で、情報をしっかりチェック・入力)
パソコン:Sit down Experience (席に座って、 超集中した状態で、がっつり情報閲覧・情報作成)

ひとつ言えることは、姿かっこうが一緒で、中身だけ少しずつ毎年アップグレードされたスマホにみんなが飽きはじめていて、「何か面白いもの無いかな?」という渇望が溢れだしている。その期待を一身に受けているのが、ウェアラブルであり、IOTであり、というのが現状ではないでしょうか。スマホのインパクトがあまりに大きいので、それと同じ期待を背負わせるのは、ちょっと酷だなという気もしますが。

私は、ちゃんと上で書いたような使い方ができれば懸念点を補って余りある価値があると判断したので、まずは一個買ってみることにします!

というわけでアップルさん、日本でも4月発売お願いしますねー。

iOSアプリの配布サービスは結局Test Flight(公式)がいい

アプリではValue Proposition(提供価値)やUX(ユーザー体験)が大切なことはもちろんですが、致命的なバグや・初歩的なユーザビリティの欠陥が無いことが大前提です。なので、公式のアプリストアでアプリを配る前に、友人や同僚にアプリを配って試運転をしている開発者の方は多いかと思います。
 
公式ストア経由以外でアプリを配布するためのツールとしては、Test Flightというサービスがデファクトスタンダードでした。しかし、Test Flightサービスを運営するBustly社がAppleに買収されたことによって、状況がちょっと変わってきました。
 
iOSではTest FlightサービスがAppleの開発者向け管理画面(iTunes Connect)の一機能として組み込まれ、Android向けのサービスは残念ながら終了となりました。
 
これからどうすればいいか?AppleのTest Flightを使ったほうがいいのか。何かほかのツールを探したほうがいいのか。
 
元祖TestFlightと比べると別物になった感がありますが、僕の結論としては、生まれ変わった公式Test Flight (iTunes Connect)を使い続けることにしました。
 
ただ、実際に使ってみて、ちょっとトリッキーな点もいくつかあったので、それらのTIPSも含めてシェアしたいと思います。
 
Apple公式Test Flight on iTunes Connectの概要はこんな感じ。
  • Internal Test(内部テスト)とExternal Test(外部テスト)がある
  • Internal Testはその名の通りチーム内(開発者、デザイナー、マーケターなど)にアプリを配布するためのもの。登録15名まで。アップルの審査が要らない。
  • External Testは1000人までアプリを配ることができる。アップルの審査が必要。

詳しい使い方はこちらを見ていただくのがよいかと。

 
まずは、このサービスのメリットをまとめてみました。
 
  1. 完全無料(開発者登録してれば)
  2. プロビジョニング気にしなくていいから開発者がラク
    • iOSアプリでは、Appleのプロビジョニング(身元保証書みたいなもの)がないとアプリをインストールするができませんでした。なので、アップル以外が提供するアプリ配布サービスでは、こんなながーーいプロセスを経ないとアプリを配布することができませんでした。
    • 公式Test Flightではこんな感じでだいぶシンプルに使えるようになりました。ステップ数で言うと半分くらいですかね。何よりも新しいユーザーを追加するたびに、provisioningを追加してビルドし直す、という作業をしなくてよいのが素晴らしいです。
  3. テスターさんもラク
    • 今までは、Appleのタイトコントロールのおかげで、ユーザー(テスター)さん側でも、アプリの「プロファイル」を端末に入れてもらう必要がありました。こんな感じのことをお願いする必要がありました。技術に明るい人ならいいのですが、アプリを本当にテストして欲しい人って、そうじゃないケースのほうが多かったり
    • 公式Test Flightでは、これも必要無くなりました。Test FlightというアプリをApp Storeからダウンロードすると、この辺のことをあとはよろしくやってくれるのです。
  4. Internal Testではアプリ内課金(IAP)のテストができる
    1. 僕自身はIAPを自分のアプリにいれたことが無いのですが、先日参加したiOS All Star勉強会で教えてもらいました。
 
デメリットも結構ありますw
 
  1. Internal Testは、プロジェクト掛け持ち不可
    • ある人を僕のプロジェクトに登録したところ、Appleさんから「すでに他のプロジェクトのメンバーだから登録できません」と言われました。普通に複数のプロジェクトを掛け持ちしている人なんて沢山いると思うのですが・・・
  2. External Testはアップル審査が必要
    • そもそもβ版の配布になぜ審査が要るんですかね?Androidなんて公式リリースでも審査無いのに・・・ただ、審査期間は通常の審査に比べて著しく短かったです。だいたい1日から長くても3日程度。おそらく審査基準も通常審査よりも甘め。年末の審査すごく混みあう時でも、External Testの審査は即日OKが出ていたりしたので、違うチームが審査しているのかもしれません。 ちなみに、Appleのカスタマーサポートには、βテストなのにそもそも審査するのがおかしい、とメールしておきました。
  3. テスターのデバイスがiOS8以降でないとダメ
    • iOS8は浸透が遅いので、未だに結構iOS7の人がいます・・・
  4. Xcode Beta versionでビルドしたアプリは受け付けてもらえない
    • なのでWatchアプリとかはまだ配れません。
 
注意事項
 
  • テスター登録はApple IDのメールアドレスで
    • テスターを友達にお願いするときには、Apple IDとして使っているメールアドレスを聞いて、それを使うようにしてください(これによってprovisioning / profileまわりをよろしくやってくれるので)
  • 招待状はApple標準メーラーで開いてもらう
    • テスターさんのメールアドレスがgmailだった場合、招待状をGmailアプリで開くとなぜかテスト用アプリがインストールできませんでした。Apple標準メーラーで招待状を開くとインストールできました。
 
まとめ
 
というわけでバラ色のソリューションという訳ではありませんが、僕にとってはprovisining/profileまわりを一切考えなくてアホアホ配布できるというのは、デメリットを補って余りある利点だと思ったので、このまま公式Test Flightを使っていくことにしました。
 
おまけ情報ですが、アプリのバイナリファイル(IPAファイル)をウェブにアップロードするだけで、ウェブ上で擬似的にアプリを実行できるappetize.ioといイケてるサービスもあるみたいです。
 
実機で体験するとのは違うとは思いますが、目的によってはこういうものを使ってもいいかもしれないですね。
 
あと、Androidは?という声が聞こえて来そうですが、Androidはprovisioning / profile等の面倒がないので、正直どのサービスを使ってもそれほど変わらないかなーと思います。配るだけなら、ツールを使わなくても、apk本体をメールで送ることもできますし。
 
候補としては、hockey app, ubertesters, deploygate, crashlyticsあたりがメジャーな選択肢で、値段・ユーザー数・プロジェクト数・その他の付加機能等を比べながら選んで頂ければよろしいかと。
 
以上、アプリビジネス/アプリ開発やってる方々の参考になればうれしいです!

文系人間もプログラミングを学ぶべきか?

最近、プログラミング(コーディング)を勉強しよう、という記事をよく目にするようになりました。

でもさー、プログラミングって難しいんでしょ?

いくら頑張っても結局エンジニアの人にはかなわないんだから、そんなものに手を出さないで自分の得意分野に集中したほうよくない?

という考え方もありますよね。この記事では、俗に言う「文系」人間がプログラミングを学ぶメリットについて考えてみたいと思います。

何を隠そう私自身も、生粋の文系人間なのですが、1年前にiPhoneアプリづくりを始めて、なんとか2つのアプリをリリースすることができました。

Mail Now – ワンタッチメール送信

TreasureBox – 好きなものを一か所に集めてあなただけのランキングを作ろう

たった1年でありますが、この経験をもとに、タイトル「文系人間もプログラミングを学ぶべきか?」への結論を書くと、

たしかに大変だけど、それを補って余るくらい楽しい。

全ての人が勉強する必要はないけど、少しでもテクノロジーに触れる仕事をしている、もしくはテクノロジーを使って世の中を楽しくする・便利にするのが好き、という人は一度トライする価値があると思います。

もうすこし具体的にどんな人にオススメかというと、下の3つの質問のうち2つ以上がYESならかなりオススメです。全部YESなら今日からはじめましょう 🙂

  1. テクノロジーを使って、実現してみたいことはありますか?

  2. 新しいことを学ぶことは好きですか?

  3. 好きなことは、とことん突き詰めてやるタイプですか?

では、この3つの質問にそって、話を進めていきたいと思います。

作りたいものを思いのままに作るための武器

いま、ITの世界はものすごく面白いことが毎日起きていて、この先少なくともあと10年はさらに進歩が進んでいくと思います。そんななかで、あーこういうサービスがあれば、こんな風に問題が解決できるなぁ、というアイディアを思いついて、今日からでも動き出したいような人にとって、プログラミングは絶好のツールです。

社内の人間(マネジメントやチームメイト)を説得すること無く、会社を起こすために資金を集めることもなく、今すぐ作り出すことができるのです。

IT系の会社で働いる方は、本業にも必ず活きます。IT系の会社にとってのプロダクト開発は「本業」です。メーカーにとっての「生産現場」と同じです。ここでどのようにものづくりがされているかを知らずして、会社の戦略を立てることはできないと思います。企画・プロダクトマネージャー・ディレクターなどの仕事に従事される方はもちろん、管理部門や営業など直接関係のない職種の方でも、必ず本業のクオリティーを上げることができるはずです。

たしかに難しいけど、英語よりカンタン。

幸いなことに、開発の敷居はどんどん下がっていて、あなたがコンピューターを持っているなら、ほとんどの開発環境を無料で整えることができます。(スマホアプリをリリースしたいなら、AppleやGoogleに開発者登録をする必要がありますが。前者は約1万円、後者は約3000円程度。)

ご存知かもしれませんが、プログラミングをするにはプログラミング言語を学ぶことになります。「言語」なので、英語などと比較したくなりますが、英語より断然カンタンです。英語だと読む、書く、話す、聞く、が必要ですが、プログラミングは読んで、書ければOkです。それにリアルタイムで反応を返す必要もありません。何か分からなければ、うーん、うーんと悩みながらGoogleを検索したり、詳しい人に聞いたりしながら、答えを出せばいいのです。

さらに言うと、最初は「書く」ことさえできなくても大丈夫です。ある程度アプリ作りの仕組みを理解したら、ウェブや参考書で自分が望む動作と似ているコードを頂戴してきて変更していきます。またプログラミングでは「ライブラリー」という便利な道具があって、多くの人が共通で使うようなコードは、ただ部品を組み込んで呼び出すだけで目的達成です。まずは自分が作りたいものを手段を選ばず作っていき、そのうちに少しずつ自分のオリジナルのコードが書けるようになればいいのです。

目的を達成するために新しいことをどんどん学んでいくプロセスは楽しいものです。スポーツで試合に勝つために、新しい技術を習得していくプロセスにも通ずるものがあると思います。

最後は情熱

さんざんハードルを下げておきながら、相反するようなことを書きますが、プログラミングをしてると、必ず「ハマリ」ポイントがやってきます。自分では絶対動くはず、と思っているコードが思い通りに動かなかったり、どうやって目的を達成するコードを書くのか皆目検討がつかない状況です。そんなときにはひたすらドキュメントを漁ったり、識者にアドバイスを求めたり、自分が書いたコードを穴が空くほど見なおしたりして、なんとか迷宮から抜け出す必要があります。そんなときには、くじけそうになるのですが、「このアプリをなんとか作って世の中に出したい」という思いだけが心をつなぎ止めてくれます。そして、何日か頑張っていると、不思議と光が見えてきます。

私の場合、そもそもiPhoneアプリを作りたいと思ったのも、TreasureBoxのようなアプリを作りたいと考えたからです。でも、いきなり作るのは難しそうだったので、まずは一つ練習をということで、3ヶ月かけてMailNowを作り、それから3ヶ月間MailNowの改善をしながらTreasureBoxの具体的な構想を立て、その後6ヶ月程度かけてTresureBoxの開発をしました。日曜プログラマーなので、こんなに長い時間かかりましたが、学生の方とかならこの半分の時間でいけると思います。

自分はとても飽きっぽくて怠け者のの人間なのですが、自分のアイディアに興奮して世の中に本気で出してみたい!と思ったのと(興奮しているのは自分だけですがw)と、アプリを作るために新しいことを学んでいく過程がとても楽しかったです!

さてさて、思ったより長文になってしまいました。

最後になりましたが、プログラミング初心者の僕のハマリポイントで幾度も助けてくれた、のんちゃんOgaogaに深くお礼して、このエントリーを締めたいと思います。

このブログが誰か一人でも多くの方をインスパイアして、プログラミング仲間が増えることを願ってます。

Mobile Analytics

ブログ再開

ただいまイスラエルのテル・アビブに出張中です。
ひさしぶりにまとまった時間ができたので、ブログを再開しようと思い立ちました。
 
前の会社でスウェーデンに駐在していた頃、生活記・旅行記みたいな感じでブログをつけていたのですが、サーバー借りてるロリポップさんが勝手に新しいシステムに乗り換え、自分のブログ引っ越しをずっとサボった結果、どこかのタイミングで強制削除されてしましまっておりました。。。涙
 
今回ブログを再開するにあたっては、もうちょっと内容とターゲット読者を絞って書いてみようと思います。ウェブ・ネット業界で、プロダクト作りに関わる人達に向けて、ぼくが考えていること、ワクワクしていること、悩んでいること、などを発信していこうと思います。
 
自分が持っている情報や考えを惜しみなくシェアするとともに、色々な人からフィードバックをもらってそれらをブラッシュアップできたらいいな、と。
 
ネタはEvernoteにメモって貯めてきたので、しばらくはネタ切れしないはず・・・
ただ、反応無いとやる気が少しずつ萎えていくので、読んだ方LIKEとかコメントよろしくおねがいしますmm
 

IMG_6561.JPG

© 2024 プロダクト道

Theme by Anders NorénUp ↑